富士フイルム「X-T2」新製品体験イベントレポート(その4:開発者トークショー:もう一眼レフはいらない)
前の記事では、開発までの調査やコンセプト決めというお話でしたが、ここから特にX-T2で実現されたファインダー、AF、フィルムシミュレーション、動画に関する開発秘話を聞かせて頂きました。
「未来が見えるファインダー」近藤様
X-T1からのファインダーに掛ける想い
見る機能と性能を向上させるのはあたりまえ。
それに加えて、お客さまに感動と楽しみを与える開発と改善に取り組んで来た。
銀塩時代から改善され続けてきた一眼レフのOVFは既に完成したものとも言えるが、我々はEVFの方が将来性があると考えている。
未来が見えるファインダーとは、撮影される結果がそこで画として見えること。これはEVFの方に分がある。
加えてEVFならマルチウィンドウが使える。スプリットイメージの表示などで使えるのもメリット。
その代わりEVFは内部で画を作るという工程があるのでどうしても遅れが発生する。
X-T1から一眼レフから負けないファインダーを作るという目標を立てていたが、X-T2でジャンプアップした。
X-T2のファインダーはEVFの完成形に近づいたと考えている。もう一眼レフはいらないと言ってもらいたい。
究極のEVFを目指す取り組み
視野角が広く明るいファインダーとしてX-T1の表示倍率 0.77倍はクラス最高だった。
この広く、細部まで見えるファインダーは非常に大きな光学レンズを搭載することで実現した。
水平視界は31度もある。
2m離れて50インチのテレビを見る感覚に等しく実質大画面で高精細。背面液晶では実現出来ない。
広く見えるファインダーは光学レンズのノウハウの合わせて実現している。
表示タイムラグの問題
X-T1でもタイムラグ0.005秒を実現していた。
他のカメラと比べると違いは判る筈。目を振っても殆ど遅れは感じなかった筈。
従来のファインダーは画を取り込み、画を作ってからファインダーに表示していた。
しかしX-T1ではラインごとに取り込んだ映像を、ラインごとにEVFに出すという駆動方法を考えた。
この結果遅れが無い表示が可能になった。
フレームレートのブースト機能を搭載。
ブースターグリップを付けることで100fpsを実現出来る。
しかも間引きが無いフルフレームでの表示を行なっている。
他社で良く100fpsとか120fosという表示がされているが、それは間引きによって画像が劣化している。
富士フイルムは画像を劣化させること無く100fpsで表示させている。これは自慢と言って良い。
ブラックアウトの改善 内田様
ブラックアウトの改善がX-T2の開発で非常に大きなポイントであった。
被写体を捉え続けるためにもAF枠に入れる必要がある。
そこでブラックアウトが少ないことはAF追従性の為にも重要な改善となる。
X-T1とX-T2のブラックアウト時間比較
白い部分が表示されている長さ、グレーの部分がブラックアウトの時間、↑:AFサーチタイミング
X-T2では高速センサーの開発による読み出しの高速化、シャッターチャージ時間を削る、シーケンスの見直しでライブビューで表示される時間を増やしたなどで目標を達成した。
AFサーチタイミングの増加で精度も上がっている。
ライブビュー中でAFを行う頻度を増やすことが出来、結果的に複雑な動きにも追従する性能を飛躍的に高めることが出来た。
結果的に運動会くらいの動きであれば確実にAFが合わせられ続けるようになった。
プロが使うような環境でのAF動体予測
動きが予測出来ない野生動物、複雑に動くスポーツなどでも追従出来るようにX-T2から新たにAF-Cのカスタム設定が出来るようになった。
3つの特性パラメーターで全てのシーンに対応出来るようにした。
- 被写体保持特性(時間)
- 食いつきの特性
- AF枠からアウトした時や被写体が入って来た時に、最初の被写体をつかむのか、入って来たものを捉えるのか
- 速度変化特性(加速度)
- 被写体が入って来るとき、加速するのか、等速なのか
- 加速する場合はAFの安定性を落として早く追従するようになる
- ゾーンエリア特性
- 被写体がAFゾーン内で上下左右に動く時に設定
- 中央を優先するのか、カメラが最適に認識するのか、必ず手前を捉えるのかという特性を変える。
但し、これらを組わせて設定するのは非常に難しい、正直自分も出来ない(笑)
ユーザーが簡単に設定出来るように被写体の特長を抽出し分類した結果、代表的な5つのセットに纏めた。
- Set1
- いままでのカメラと同じ特性
- Set2
- 障害物が現れる、フレームアウトしやすい被写体向け
- Set3
- 急加速、急減速する被写体
- Set4
- 突然あらわれる被写体
- Set5
- 前後、左右に激しく動く被写体
X-T2の改善ポイントのまとめ
ロゴが無いX-T1とX-T2を並べてみてもどちらか判らないくらい外観は変わっていない。
しかし実際はこれだけ変わった。
特に変わった点はどこか?
- ダイアルの下が一緒に回ってしまうという声が多かったので、高さを変えプッシュで回るように改善
- グリップの形状最適化、ぱっと見はそれほど変わらないがよりグリップ感が上がっている筈
- デュアルスロットでしっかりバックアップ出来るように
- 十字ボタンの高さを上げる
- 世界初3軸のティルト液晶は光軸のセンサーのまま縦撮りが可能になった
世界初3軸チルトモニター
デザイナーのインプットのまま実現すると厚みが出てカッコ悪い、設計者は頭を抱えながら見た目を犠牲にするこなく実現した、0.5mmしか厚くならず3軸を入れ込むことが出来た。
某メーカーのようにものすごいメカニズムを搭載すること無く、出来るだけボディーサイズに影響を与えない、スマートに実現する方法で纏めた。
AF-Cカスタム設定のGUI開発について 佐久間氏
言葉で説明すると非常に長くなる内容を動きのあるGUIで表現した。
まずは自分が機能を理解することから始まった。
10パターン以上の画を描いていろいろな人に見てもらって泥臭くたどり着いた。
ブーストモードのささやかなメーター表示も気がついて欲しい(笑)
動画でレポートします。(iPhoneで撮影)
画質・動画の話 入江氏
センサー 16MPから24MPとし解像度をアップし、信号処理エンジンX-processor PROを新開発。2つの組み合わせで高画質を達成。
低感度では解像度が非常に伸びている
高感度でも画素数が増えているが、X-T1よりはるかにノイズ特性が良くなっている。画像プロセッサーで更に高解像度と低ノイズを両立し、常用感度ISO6400からISO12800に向上した。
フィルムシミュレーションについて
富士フイルムの銀塩のフィルム処理は。エミュレーションするものでは無く、お客さまの要望の応えるフィルムのシミュレーションとしてデジタルに処理を落とし込んだものである。
Velviaモードの改善
色飽和の改善し、赤の再現性が良くなった、ビビッドに出ながら陰影が残るようになった。
このように同じフィルムシミュレーションでもX-T1と表現が異なる。
ACROSモードの追加
質感描写とメリハリ感、高感度の粒状感を重視した。
シャードやハイライトに粒状感が乗らず、中間調の部分に心地良い粒状感がえられる珍しいシミュレーションである。
X-Prosessor PRO+X-Trans IIIの性能が必要なのでこれまでのカメラに移植することは非常に困難である。
他のカメラにも新機能を出来るだけファームアップで提供したいが、このACROSだけはいかんともし難い部分だった。
4K動画について
富士フイルムの動画を良いと思っている方挙手をお願いします → いない?(笑)
動画で画質を良くする場合究極の手段を考えた結果、富士フイルムの静止画の画質をそのまま秒間30枚くっつけることで、30fpsの動画にすることに行き着いた。
とにかく静止画の画質をそのまま秒間30コマの4Kに押し込めて、X-Processor PROをぶんまわすことにしたので社内では各方面に多大な迷惑を掛けた。
さらに高画質にするため、センサーから得られる元々の画素数を多く取ってあげることもやった。
1500万画素くらいの画を秒間30枚処理をして、それをリサイズすることで非常に高画質な4K動画出来た。
しかしながらこの画像処理は4Kだけで、FullHDでは行われていない。
但し、X-Pro2からフルHDの画質も圧倒的に良くなっている。
X-Pro2ユーザーの方にはなかなか気付いてもらえなかった(笑)
これからは動画だけでも使って頂けるカメラにしたい。
ということで、ここで本来の発表時間は終了というおとですが、時間オーバーしてい頂き。次はレンズのお話をして頂きました。(続く)
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