フルサイズミラーレスカメラの激しい戦いの生き残りが最も厳しいのはニコン?(Petapixel)
建築およびインテリア写真を提供するSonder Creative社の写真家Usman Dawood氏がフルサイズミラーレス市場に参入したNikonが直面している状況を分析し「何故Nikonはフルサイズミラーレスカメラレースを脱落しているのか」という記事を掲載しました。
“A few decades ago, Nikon was the number one manufacturer for high-end professionals. If you were a pro photographer who shot with a 35mm full-frame camera, you probably shot with a Nikon.”
Via ‘ Why Nikon is Failing in the Full-Frame Mirrorless Camera Race (https://petapixel.com/2019/06/24/why-nikon-is-failing-in-the-full-frame-mirrorless-camera-race/)
背景
- 数十年前Nikonはハイエンドなプロフェッショナル向けとしてナンバーワンメーカーであった。
- その後長年を掛けてCanonはNikonからそのポジションを奪い世界最大のフルサイズカメラメーカーとなった。Nikonはそれから長い間2位となっていた。
- そして近年この業界の大きな変革が到来したことでNikonの立場は再び脅かされている。
- SONYはミラーレス化を積極的に推進した会社であり、他社がそれに続くことになった。
- Panasonicはフルサイズカメラの製造企業としては殆ど認知されていなかったがこの市場にチャレンジして来た。
- このような新たに生じた競合状態は、各社の市場ポジションに大きな影響をもたらした。
競争するには企業規模が小さ過ぎる?
- 時価総額を比較すると競合に対しNikonの企業規模はかなり小さい。
- Nikon💲5.7B
- Canon💲30B以上
- SONY 💲64B (コメントいただき修正しました)
- Panasonic 💲20B
- これらの企業のカメラ部門はにNikonと同等の規模であると主張することも出来るが、企業全体の規模がより大きい方が有利である。
- 例えばSONYの収入の大部分は保険および金融商品から得られており、投資と開発に利用可能なキャッシュの余裕を得ている。
- 単一のセグメントだけに集中するのでは無く、成長が予測されるセグメントに投資することが可能である。
- ある市場セグメントが縮小しても企業全体のポジションに大きな影響を与えない。
- Nikonが直面する問題は写真業界への依存度が高く十分な多様化を行なっていないということである。
- 現在この業界はスマートフォンに侵食されたことで、特にNikonに大きな問題を投げ掛けることになっている。
- Nikonの売り上げの減少幅は他社より大きい状況になった。
- 加えて業界自体も縮小していることで、Nikonは企業としての開発力や革新に対する影響力を失う可能性があることを意味している。
- Nikonがこのような急激に変化する業界で競争力を維持する為には、新しい開発と革新が不可欠である。
- Nikonは効果的かつ長期に渡る競争を行うには規模が小さ過ぎるのかもしれない。
ビデオに対する経験不足
- Nikonはフルサイズカメラメーカーの中でビデオカメラの分野に欠けている唯一のメーカーである。
- 他の大手メーカーはシネマ向けカメラの開発を適切に行なっている。
- Canonは動画用では最高のAFを持っているというイメージを持っている。
- SONYはビデオ撮影に最適な高感度カメラを製造している。
- 現在のミラーレスカメラでは最高のビデオ機能を持っている企業の1つがPanasonicである。
- これらの企業は顧客に対して写真業界とビデオ業界の両方に関連があるというイメージが大きな利点となる。
- 一般的にクリエイティブなビデオ撮影用としてNikonのカメラが採用されないことで、このセグメントでの地位を拡大出来なくなってしまった。
- 私はNikonが最新のカメラで魅力的なビデオ機能を提供していることは理解している。
- 問題は機能では無く、市場での認識であると考えている。
- 一般的な顧客は他のメーカーの方にビデオ機能を求めてしまうことになる。
- ビデオ機能は今まで以上に重要になっており、更に多くのカメラマンがハイブリッドシューターのゲームに参加し業界で重要なセグメントになって来ている。
- ビデオ機能で目立たない限りNikonには厳しい戦いが待っている。
レンズマウント
- Nikonは新レンズマウントについて大きな変更を行った。
- これまでのNikonがデジタル一眼レフの中で最も小さいマウントの1つであったことで、より過剰にそれ補完し(大径化し)てしまった。
- 新しいZマウントは非常に大きな可能性を秘めている。
- 問題はNikonがその可能性を潜在的なものに留めたままで活かしていないということだ。
- 他社はそれらのマウントに適切で実用的で興味深いレンズを開発した。
- CanonのRFレンズはその良い例、新たに開発したレンズはこれまで市場に同等のものが見当たらない。
- Nikonはf/1.8単焦点レンズと新24-70mm f/2.8に加え、58mm f/0.95を発表した。
- しかしそれは暖炉上の飾りにしかなっていない。
- 現在のロードマップに他の興味深いものや新しいものは見当たらない。
- より大きなマウントを持っているという広告だけでは無駄であり、Nikonはこの新マウントを活かす為に各種レンズは大きな改善を行う必要がある。
- レンズに対するアプローチの欠如は、多くの写真家がNikonのミラーレスシステムに移行する為の必然性を認識していないと感じさせてしまった。
- Nikon D850やその周辺機器と多くの素晴らしいレンズを所有しているプロに対し、Zマウントカメラが実際に何を提供出来るのかを疑問に思う。
シングルカードスロットは大失敗
- シングルカードスロットはマーケティング上での大きな失敗であった。
- Nikonは新ミラーレスカメラを大きく宣伝したが、それがリリースされた時人々が最初に気付いたのはシングルカードスロットであることだ。
- 低価格モデルであれば大丈夫だったかもしれないが、Z7は当初約3400ドルで販売されたのである。
- この価格は広く愛されているD850よりも高価であり、多くの写真家にとっては(乗り換えは)効果的では無いことを意味してしまった。
- 皆さんはこのことを重要に思っていないかもしれないが、これはNikonの新ミラーレスカメラに対する認識に大きな影響を与えたと考えられる。
- 特にD750、D500、D850のような(デュアルスロットの)カメラを所有している場合、3000ドル以上の価値を持っているものがカードスロット1つしかないのは疑問に感じる。
- Nikonは自分達のデジタル一眼レフカメラとの共喰いを避けようと躍起になって、競争相手であるSONYの存在を忘れていたようだ。
- これがSONYがNikonから2番手を奪った理由の1つだろう。
まとめ
- この非常に激しい競争の中でNikonは最も厳しいポジションにある。
- ミラーレスの発売から6ヶ月経過したが、これらの問題は解決されていない。
- SONYはその後新しいカメラは発売していないが、それでもNikonを追い越し続けている。
- 企業としてNikonは新システムに投資する同程度のポテンシャルを有していないかもしれない。
- その結果、この極端に厳しい市場で競争することは控えめに言っても難しいと考えている。
- 多様化の欠如は言うまでも無く、NikonがPENTAXの道を歩むのを見始めているのかもしれない。
- 問題が解決しない限り、Nikonは今後5年以内に買収の対象となる可能性がある。
いかがでしょうか?
この記事の内容に全面的に同意出来ない部分もありますが、少なくともデジタルカメラ市場が縮小しているのは事実で、各社はそれを補う為にはハイエンド市場を重視しているのだと思います。
Nikonがトップであった時代からプロ向けのハイエンドなスチルカメラ製品が得意で、そういうイメージになっていたNikonが最もその煽りを受けているのかもしれませんし、実際シェアも低下しているようです。
一方で危機を乗り越えた経験があるLeicaは、好調な時にリストラを敢行してまでも多様性のある企業を目指しているようですので、Nikonも同じように乗り越えて頂ければと思います。
イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press)
原文からの誤記ですが、ソニーの時価総額が一桁少ないですね。
4社の中で時価総額が最大なのはソニーなので。
ご指摘して頂き、ありがとうございました。確認すれば良かったと思います。
訂正させて頂きました。
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